この記事はhydrogen Advent Calender 2024の5日目の記事です。
本題
明日の記事で使うために、順序数についてざっくりと解説しておく。
自然数を定義する
昨日の記事で述べたように集合論の世界では集合以外のものは存在しない。現代の数学は集合論の上に構築されているため、例えば自然数は集合として定義できなければ使い物にならないはずだ。では、自然数をどのように定義するか。
自然数はペアノの公理によって定義される。ペアノの公理は次の5つの公理からなる。
- 0は自然数である。
- 任意の自然数nに対して、nの後者S(n)も自然数である。
- 任意の自然数nに対して、S(n)=0である。
- 任意の自然数nに対して、n=mならばS(n)=S(m)である。
- 数学的帰納法が成り立つ。
これらを満たすように0と後者関数Sを定義することで自然数を定義することができる。
集合論においては次のように定義する。
0S(n):=∅:=n∪{n}
ここから0=∅、1=S(0)={0}={∅}、2=S(1)={0,1}={∅,{∅}}、⋯となる。
またこのようにすることで、n<m:⇔n∈mとして順序関係を簡単に導入することができる。
順序数を定義する
ここで、自然数の集合ωを考えてみよう。これ自体はペアノの公理を満たさないので自然数ではない。だが、先ほど定義した順序関係をこれに適用してみよう。
すると、いかなる自然数nに対してもn∈ωである。つまり、先の定義によればn<ωであるといえる。また、先に定義した後者関数Sをωに適用することで、ωの後者ω+1というべきものを定めることができる。ω∈ω+1であるから、ω<ω+1である。
このようにして、自然数の集合論上での定義を順序関係という観点から拡張することで、順序数というものを定義することができる。
より形式的には、順序数Xは次の条件を満たすものとして定義される。
- x∈X,a∈x⇒a∈X
- x,y∈Xに対しx<y:⇔x∈yとするとXの空でない部分集合Yは必ず最小元を持つ。
なお、順序関係は<とイコールがないことに注意する。
全ての順序数の集まりは集合ではないということが従う。これは次のようにして示される。
全ての順序数の集合Ordが存在すると仮定。
Ordの元は順序数であるので、その要素は順序数となりOrdに属する。よって、Ord自体も順序数である。
ゆえに、Ord∈Ordであるが、これはOrd<Ordとなり矛盾する。
よって、全ての順序数の集合は存在しない。
順序数の例
自然数は順序数である。また、ωは自然数の集合であるから順序数である。他にも、ω+1:=S(ω),ω+2:=S(ω+1),⋯も順序数である。
ただ、このままではω+ωをいつまでたっても定義できない。
そのため、次のようにしてω+ωを定義する。
ω+ω:=n∈ωsup(ω+n)=n∈ω⋃(ω+n)
これも順序数である。
同様にしてω⋅3:=ω+ω+ω、ω2:=ω⋅ω、ωωなども順序数として定義される。
順序数の中で、ある順序数αを用いてS(α)と書けるようなものを後続型順序数、そうでないもののうち0以外のものを極限順序数という。
例えば、1は後続型順序数、ωは極限順序数である。