連続体仮説

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この記事はhydrogen Advent Calender 2024の15日目の記事です。

連続体仮説

連続体仮説とは、次のような命題である。

R=1|\RR|=\aleph_1

この命題は、実数全体の集合R\RRの濃度が可算濃度0\aleph_0より大きい最小の濃度1\aleph_1であるというものである。

この命題が、ZFC公理系から独立であることは広く知られた事実である。そして、実はR=P(N)|\RR|=|\mathcal{P}(\NN)|であるからこれは冪集合の濃度がZFC公理系から導けないことを意味している。

このことは、たとえば次のように仮定しても矛盾しないということであろうか。

R=ω|\RR|=\aleph_\omega

こんなに大きな濃度を持つと仮定しても矛盾しないということは、本当にあるのであろうか。

実は、ZFC公理系の範囲内でも冪集合の濃度に対するある程度の制約を与えることは可能である。

共終数

次のような命題が成り立つ。

cf(α)=ωRα\cf(\aleph_\alpha)=\omega\Rightarrow|\RR|\neq\aleph_\alpha

この命題は、共終数がω\omegaであるような濃度α\aleph_\alphaを用いてR=α|\RR|=\aleph_\alphaと仮定すると矛盾するというものである。

それゆえに、R=ω|\RR|=\aleph_\omegaではないということが示される。だが、R=ω+1|\RR|=\aleph_{\omega+1}とした場合はどうであろうか。

この場合、cf(ω+1)=ω+1\cf(\aleph_{\omega+1})=\aleph_{\omega+1}であるから、上の命題が適用できない。ゆえに、R=ω+1|\RR|=\aleph_{\omega+1}と仮定しても矛盾しない。

そう。別にR\RRの濃度が極端に大きすぎないというような制限はないのである。

そして、ZFCにおいて正則基数λ\lambdaの冪集合の濃度に対する制約は次の2つしか存在しない。

  1. κλ,P(κ)P(λ)\forall \kappa\leq\lambda,|\mathcal{P}(\kappa)|\leq|\mathcal{P}(\lambda)|
  2. cf(P(λ))>λ\cf(|\mathcal{P}(\lambda)|)>\lambda

正直、成り立っていて当然のような制約である。だが、これ以外の制約は存在しないのである。

それゆえに、だいぶ前で冪集合を取るという操作はある種超越的であると述べたのである。