MATLABで合成不確かさを計算する
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この記事はhydrogen Advent Calender 2024の3日目の記事です。
本題
MATLABとは
MATLABとは数値解析を行うソフトであり、行列計算を高速に行うことができる。そのため、自然科学の分野では広く利用されている。 このツールは、Symbolic Math Toolboxを導入することで微積分や数値解の探索といった数式処理も行うことができる。
今回はこのSymbolic Math Toolboxを利用して、合成不確かさを計算する方法を紹介する。これは実際に自分が1年生の時に基礎科学実験Aという科目で用いていたものである。 いわゆる理系の学生であれば、MATLABは無料で使えることが多いので、この方法を使うことで面倒な合成不確かさの計算をある程度自動化することができる。
合成不確かさとは
合成不確かさは、不確かさをもつ複数の測定値から計算された値の不確かさのことである。 例えば、ある物理量が複数の測定値からとして計算されたとき、その不確かさは次のように計算される。
ここで、はの不確かさである。
MATLABで合成不確かさを計算する
実際に僕が書いたコードを示す。
% 合成不確かさ計算用
% f: 求めたい値の計算式
% arg_symbols: fに登場する不確かさを含みうる変数の配列
% value: 上の変数のそれぞれの値の配列
% delta: それぞれの不確かさ
function p = uncert(f,arg_symbols,value,delta)
ds=0;
for i = 1:numel(arg_symbols)
df = diff(f,arg_symbols(i));
dfv = subs(df,arg_symbols,value);
ds=ds+(vpa(dfv))^2*(delta(i))^2;
end
% [そのままの値 不確かさ]
p=[vpa(subs(f,arg_symbols,value)) sqrt(ds)];
end
このコードは、f
に登場する変数の不確かさを含む変数の配列arg_symbols
と、それぞれの値value
、不確かさdelta
を受け取り、合成不確かさを計算する関数である。
途中のfor
ループでは、各変数について偏微分を計算し、それぞれの不確かさとの積の2乗を取っている。最後にそれらを足し合わせて、求めたい値とその不確かさを返している。
この関数を使うと、例えば次のようにして合成不確かさを計算することができる。
syms x y z
f = x*y*z;
arg_symbols = [x y z];
value = [1 2 3];
delta = [0.1 0.2 0.3];
p = uncert(f,arg_symbols,value,delta)