濃度のお話

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この記事はhydrogen Advent Calender 2024の13日目の記事です。

本題

有限集合における要素の個数の概念を拡張したものとして、集合の濃度というものが定義される。これは、集合の要素の「数え方」という点に着目して拡張したものである。

以下において、X,YX,Yを集合とする。

濃度の比較の定義

X=Yf:XY,fは全単射XYf:XY,fは単射\begin{aligned} |X| = |Y| &\Leftrightarrow \exists f: X\to Y, f\text{は全単射}\\ |X| \leq |Y| &\Leftrightarrow \exists f: X\to Y, f\text{は単射}\\ \end{aligned}

このようにして、濃度が実際にどのような集合であるかを気にすることなく、濃度の比較を行うことができる。X=Y|X|=|Y|で1つの記号とみなすことでX|X|自体を気にする必要がなくなる。

ただ、濃度に演算を導入したりしたいときにはこれでは不十分であり、直接X|X|が何者であるかを論ずる必要がある。

有限集合においては、濃度は自然数で表現される。では、無限集合においては自然数の拡張である順序数を用いて濃度を定義するのがよさそうである。

濃度の定義

集合XXの濃度をX|X|と書く。

X:=min{α:順序数f:αX,fは全単射}|X|:=\min\{\alpha: \text{順序数}|\exists f: \alpha\to X, f\text{は全単射}\}

このようにすると、濃度は順序数で表現される。また、濃度の比較も順序数の比較に帰着される。

例えば、可算濃度0\aleph_0ω\omegaで表現される。また、最小の非可算順序数ω1\omega_1の濃度は1\aleph_1で表現される。

ω\omegaとは、自然数全体の集合であったからN=0|\mathbb{N}|=\aleph_0である。また、簡単にZ=Q=0|\mathbb{Z}|=|\mathbb{Q}|=\aleph_0である。

では、R|\mathbb{R}|はどうであろうか。対角線論法からR>0|\mathbb{R}|>\aleph_0であることと、R=P(N)|\mathbb{R}|=|\mathcal{P}(\mathbb{N})|はわかっているが、具体的にR=α|\mathbb{R}|=\aleph_\alphaとなるα\alphaは何であろうか。

実は、これはZFCからは決定できない問題である。

しかし、ZFC上でもα\alphaとしてあり得ないものは存在する。

これを解説するために、次回以降の記事で共終という概念を扱っていきたい。